東京地方裁判所 昭和29年(タ)35号 判決
原告 リリアン・コレル
被告 ジヤツク・ハーヴエイ・コレル
一、主 文
原告と被告とを離婚する。
原、被告間の未成年の長女シエリー・リン・コレル(昭和二十年十月十四日生)及び同長男ランス・クレイグ・コレル(昭和二十五年一月十六日生)の親権者を原告と定める。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、
主文同旨の判決を求め、
その請求の原因として、
原告(千九百二十二年六月十二日、アメリカ合衆国カリフオルニヤ州サンフランシスコ市に於て出生)と被告(千九百二十年三月九日、同国同州サン・デイエゴ市に於て出生)とは、共に、アメリカ合衆国市民で、千九百四十二年(昭和十七年)八月一日、同国カリフオルニヤ州サンフランシスコ市に於て、同州の法律に従つて正式に婚姻し、同州ロスアンジエルス市に於て同棲し、その間に、千九百四十五年(昭和二十年)十月十四日、長女シエリー・リン・コレルを、千九百五十年(昭和二十五年)一月十六日、長男ランス・クレイグ・コレルを儲け、現に、法律上の夫婦であるが、被告は、米国駐留軍軍属として、千九百五十二年(昭和二十七年)九月来日し、爾来、永住の意思を以て、日本に居住し、原告は、翌千九百五十三年(昭和二十八年)五月一日、前記二児を伴つて、来日し、爾来、原告の肩書住所に於て、被告と同棲し来たつたところ、被告は、同年(昭和二十八年)十二月頃から、マチコなる日本婦人と、東京都内に於て関係を結ぶに至り、爾来、原告を疎んじて、今日に至つて居る。これは、住所地法として、離婚について適用を受ける日本国民法第七百七十条第一項第一号に該当するので、被告と離婚の裁判を受け度く本訴請求に及んだ次第である。尚、前記未成年の子二名は、未だ幼少で、母親たる原告の監護を必要とするばかりでなく、前記事情もあるので、原告を右両名の親権者に指定され度く併せて申立に及ぶ次第である。
と述べた。<立証省略>
被告訴訟代理人は、
原告の請求通りの判決を求め、
答弁として、
原告主張の請求原因事実は、全部之を認める、と述べた。<立証省略>
当裁判所は、
職権で、被告本人を尋問した。
三、理 由
公文書である甲第一乃至第五号証と原、被告各本人尋問の結果とを綜合すると、
原告が、千九百二十二年六月十二日、アメリカ合衆国カリフオルニヤ州サンフランシスコ市生れの同国市民であること、被告が、千九百二十年三月九日、同国同州サンデイエゴ市生れの同国市民であること、原、被告が、千九百四十二年(昭和十七年)八月一日、同国同州サンフランシスコ市の市裁判所判事の面前で、同州の法律に従つて正式に婚姻し、現に、法律上の夫婦であること、原、被告間に千九百四十五年(昭和二十年)十月十四日生れの長女シエリイ・リン・コレル、千九百五十年(昭和二十五年)一月十六日生れの長男ランス・クレイグ・コレルの二児が出生したこと、原、被告が婚姻後、同国同州サンフランシスコ市で同棲し来たつたところ、被告が、千九百五十二年(昭和二十七年)九月頃、単身で、日本国に渡来し、爾来、永住の意思を以て、日本国に居住し、次いで、翌千九百五十三年(昭和二十八年)五月一日、原告が、前記二児を伴つて日本国に渡来し、爾来、原、被告が、原告の肩書住所に於て、同棲し来つたこと、その後、被告が鈴木町子なる日本婦人と関係を結ぶに至り、遂には、同年(昭和二十八年)十二月頃、家を出て、右町子と同棲し、爾来、原告の許には帰来しないで現在に至つて居ることを認めることが出来る。
離婚の準拠法は、法例第十六条によつて、その原因事実の発生した当時に於ける夫の本国法と定められて居るのであるが、アメリカ合衆国の国際私法によると、婚姻当事者の住所地法がその準拠法とされて居り、且、前記認定の事実によつて、本件当事者の住所が、日本国にあることが明かであるから、本件離婚の準拠法は、法例第二十九条によつて、住所地法たる日本国法である。
親権者の指定については、その指定が、離婚の効果として、それに付随して行われるのであるから、その準拠法は、離婚の準拠法によるのが相当であると解すべきであるから、法例第十六条によつて、その準拠法を定むべきところ、本件離婚の準拠法は、前記の通り、住所地法たる日本国法であるから、親権者の指定についての準拠法も、亦、日本国法であるとしなければならない。
仍て、日本国法を適用すると、前記認定の被告の所為は、民法第七百七十条第一項第一号に該当するから、被告の妻たる原告から為された本件離婚の請求は理由がある。
尚、原、被告間の二児の親権者は、民法第八百十九条第二項によつて前記認定の事情を斟酌し、原告と定めるのが相当であると認める。
仍て、原告の請求は、之は認容し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 安武東一郎 田中宗雄 田中正一)